脂質異常症とは
血液中の脂質のバランスが崩れた状態
私たちの血液中には、脂質や糖質が流れています。
これらは、細胞組織を構成する成分になったり、体にとって必要なエネルギーとなったりする大切なものです。
しかし、脂質や糖質が一定の割合をオーバーしたり、そのバランスが崩れたりしてしまうと、血管にとって大きな負担をかけます。
血中脂質の種類
血中には4種類の脂質が流れています。
- コレステロール
- 中性脂肪
- リン脂肪
- 遊離脂肪酸
です。
この中で、脂質異常症に関与するのは、コレステロールと中性脂肪の2つです。
脂質異常症の分類
脂質異常症は、
- 高中性脂肪血症(高トリグリセライド血症)
- 低HDLコレステロール血症
- 高LDLコレステロール血症
大きく分けて上記の3つに分類されます。
3つのうち、どれか1つでも当てはまる場合は、脂質異常症と診断されます。
※ 2007年に「高脂血症」から「脂質異常症」へと名称が改められました。
脂質異常症のリスク
動脈硬化の危険因子
多くの場合、動脈硬化は血液中の脂質、とくにコレステロールのバランスが崩れてしまい、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールが増えすぎることで起こります。
LDLコレステロールが増えると、血管の壁を傷つけて内側に入り込みます。そして血管の内側にコレステロールが溜まっていくと、アテローム性プラークを形成します。
このプラークが動脈硬化の原因のひとつになります。一方、HDLコレステロールは善玉とよばれ、体内に溜まったコレステロールを回収してくれます。
動脈硬化は、心血管疾患(心筋梗塞)や脳血管疾患(脳卒中)など、命を落としてしまうリスクの高い病気の引き金となります。つまり、動脈硬化を予防するためには、善玉コレステロールが多く、悪玉コレステロールが少ない状態が、望ましいといえます。
脂質異常症の検査診断
血液検査で体全体の健康状態をチェック
脂質異常症は血液検査によって診断できます。
血液検査は、体全体の健康状態を調べるうえで基本となる重要な検査です。
血中の総コレステロールをはじめ、血液をドロドロにして血管を傷つけるもととなるLDLコレステロール値と中性脂肪値、善玉であるHDLコレステロール値を調べます。
脂質異常症診断基準 一覧表
LDLコレステロール | 診断基準 |
---|---|
140 mg/dL 以上 | 高LDLコレステロール血症 |
120〜139 mg/dL | 境界域 高LDLコレステロール血症** |
HDLコレステロール | 診断基準 |
40 mg/dL 未満 | 低LDLコレステロール血症 |
トリグリセライド | 診断基準 |
150 mg/dL 以上 空腹時採血* |
高トリグリセライド血症 |
175 mg/dL 以上 随時採血* |
高トリグリセライド血症 |
Non-HDL コレステロール | 診断基準 |
170 mg/dL 以上 | 高LDLコレステロール血症 |
150〜169 mg/dL | 境界域 non-HDLコレステロール血症** |
* 基本的に10時間以上の絶食を「空腹時」とします。ただし、水やお茶などのカロリーがない水分摂取は可能です。空腹時であることが確認できない場合を「随時」と表現します。
** スクリーニングで境界域LDL-C 血症、境界域高 non-HDL-C 血症を示した場合は、高リスク病態がないかを検討し、治療の必要性を考慮します。
脂質異常症の治療
健康診断で異常を指摘された方は、当院へ
脂質異常症の治療は、大きく分けて2つあります。
1:減量と生活習慣の改善
脂質異常を引き起こすリスク要因は、生活習慣の改善と減量によって解消していきます。
- 食事内容の見直しと量の是正(食事療法)
- 継続的な運動習慣(運動療法)
- 体重コントロール(減量と適正体重の維持)
- ストレス要因の改善
- 禁煙 など
上記内容を中心に実施します。
とくに減量を実施すると、検査データは改善されていくことが多いです。
2:薬物療法による改善
あくまでも治療の土台となるのは生活習慣の改善ですが、成果が上がらないときは、薬物療法を実施します。
薬によって脂質異常症を改善する際は、
- 血中のコレステロール値を下げる薬
- 中性脂肪の値を下げる薬
上記の2つが検討されます。
どの薬をどの程度の量で投与するのかは、さまざまな点を考慮して決定していきます。
具体的には、患者さんの年齢や性別、合併症の有無や程度、そのほかも喫煙習慣の有無や遺伝的な要素などを考慮します。これまでの既往症もとても重要です。
ご本人はもちろん、ご家族を含めた詳細を確認したうえで、適切な治療方針を決定します。